まぬけなJohnny(1)

抜けた超えたと、自分でもくどいので、別の曲のことを書いてみます。“まぬけなJohnny”。


1ファンの僕が言っても説得力ないですが、これは名曲です。
曲や歌唱はもちろんですが、さらに歌詞が技巧的で素晴らしい。緻密に設計・計算された歌詞だと思います。


エレカシの全曲の中でも、もっとも散文的といえるのではないでしょうか。使われている言葉も、他の歌では多発する抽象語や心情描写、心象描写がほとんどなく、代わりに行動やセリフ、風景といった具体的な事象の描写が大半です。


 ROJのインタビューによると、宮本は「Beatlesの“She's Leaving Home”のように短い物語を歌で表現したかった」そうです。似たようなタイプとして洋楽で思いつくのが、同じくBeatlesの“Lady Madonna”や Billy Joelの“Piano man”“Captain Jack” などといった感じ。古いな。日本でも泉谷しげるなど古めのフォークや歌謡曲にこんなタイプが多いのでは。なにせ、「枯れた」「古い」タイプの歌詞だと思います。エレカシの他の歌で近いのは、“部屋”かなと思います。


そういう工夫によって、従来の内面告白的な歌詞のギリギリしたリアルさとはまた違った形で、倦怠〜甘え〜ふられ〜後悔・自己嫌悪というストーリーがとても味わい深く、リアルに感じられます。味わう余地があるというか。
そしてこれが特に重要だと思うのですが、こういう乾いた形にすることで僕を含む世の男どもにも無理なく(=「ジゴロ気取り」の有無によらず)、本質的なところで「ああ、あるある」と思える、自然な普遍性を持った歌詞になったのでは、ということです。


さて、それによって宮本は何がしたかったのか。続く。

STARTING OVER