2017.3.20 大阪城ホール

ドーンとやって来た大阪城



開演前も撮影禁止と知らずに撮ってしまった、会場の様子。



喫煙所から大阪城が綺麗に見えた。


懐かしいStone Rosesの "I am the Resurrection" などを聞きながらビール片手に開演を待つ。
暗転の後、左右のスクリーンに数々の写真がスライド上映された。明らかにプライベート写真と分かる、見たことない写真がたくさん。何度か、山中湖での合宿と思しき森深い場所などでの4人の写真が流れた後、good morningの頃からは宮本単体、メンバー単体の写真が増えたような気がして、同級生から始まったメンバーの関係性の深化、緊張感を伴ったプロフェッショナルのそれへの移り変わりを見られたようでしみじみする。


そして1曲目が、ファイティングマンときたわけである。
コンサートに来たのが1年半ぶりで、1曲目が何だろうと考えもせずに始まりを迎えたが、あのギターのリフが始まった瞬間、そうだよな30周年記念なんだもんなそれ以外考えられない1曲目だな、と妙に納得してしまった。


30年前のファイティングマンの映像は記録で見られるが、大阪城ホールのはそれらと異なる、がなりたてず歌い上げるようなファイティングマンだった。


1部前半は、アルバム「明日へ向かって走れ」から多くやられた。今の宮本にはこのアルバムが昔と違う響きで印象的に聞こえたそうである("最近気付いたのはこのアルバムの歌は悲しい歌ばかり、今宵の月以外は")僕が初めてアルバムを買ったのがこれであり、「戦う男」や「ふたりの冬」はかなりグッときた。宮本は一曲ごとに曲の解説を交えながら、噛みしめるように丁寧に歌っていた。


後半にかけて最近の定番の曲が続く中で、僕は宮本の声に違和感を感じた。中低音がいつも通り朗々と響く一方で、高音特に高いC(ド)とかB(シ)の音(桜の花〜舞い上がる、の "あ"の音)を、ファルセットにしたり地声でも軽く発声するような歌い方をしていて、喉の負担を抑えているようだった。ベテランらしい長丁場でのペース配分かと思ったが、あのグワーッと湧き上がるような地声での高音の響きは、遂に一部終了まで聞くことはなかった。


僕は最近の、「あなたへ」や「昨日よ」「なからん」などがそうであるように、宮本の裏声はとても美しい音だと感じて好きだし、音楽なんて地声の高音だけが全てのはずもないし、50歳からのエレカシはこういう風にやっていくもんなんだと理解しようとしたが、しかしここで、と言う時にあの声が聞けないのは無性に寂しかった。


30周年かあ、色んなことが変わるんだろうなあと独り言ちていたら、やや長かったインターバルが終わり「奴隷天国」から第二部が始まって、そんな想念は全て吹き飛んだ。


奴隷天国。珍奇男。コールアンドレスポンス。花男。おはようこんにちわ。待つ男。爆発するような宮本の声、声、声。
丁寧かどうかはもう分からない(珍奇男では確かによくやるグダリ方をした)、しかし明らかにバンドの演奏も変わって、もう情念の塊のようにグワッと音が押し寄せて来る。
珍奇男の緩急が、コールアンドレスポンスのギターリフが、おはようこんにちわのドラムの音が、その他何やかんやが涙腺を刺激するのでずっとボロボロ涙が出ていた。


友達がいるのさはこれまで聞いた中でもベストだった。サビにとても高い音が入っているが、そこの響きがとても素晴らしかったのは、最近の宮本のファルセットの歌い方とピッタリ合っているからであって、アルバム「風」の頃から10年かけてこの歌はさらに進化しているように思った。


花男は唐突に始まり、僕は狂喜のあまり冒頭を全部宮本と一緒に歌ってた。
珍奇男の後に感極まって「みやもとおおお」と叫んだら、それに被せるように宮本が「ありがとうみんな」と言ったので、多分僕の声は宮本に聞こえたんだと思う。
待つ男の「こういう男を笑えるか」などの浪曲っぽい節のところは力が入り過ぎて、連れの首をギリギリとヘッドロックしてしまった。


このようにして、1年半ぶりのコンサートは終わった。
会場に来た誰よりも楽しんだのではないかと自負しながら、同じく幸せそうな人達と並んで会場を後にした。



1.ファイティングマン
2.デーデ
3.新しい季節へキミと
4.悲しみの果て
5.今宵の月のように
6.戦う男
7.ふたりの冬
8.翳りゆく部屋
9.リッスントゥザミュージック
10.風に吹かれて
11.ハナウタ
12.桜の花舞い上がる道を
13.3210
14.RAINBOW
15.ガストロンジャー
16.やさしさ
17.四月の風
19.ズレてる方がいい
20.俺たちの明日

21.奴隷天国
22.珍奇男
23.Under the sky
24.コールアンドレスポンス
25.笑顔の未来へ
26.TEKUMAKUMAYAKON
27.so many people
28.夢を追う旅人
29.花男

en1
30.友達がいるのさ
31.おはようこんにちわ
32.待つ男

「善」とかそういうものではない

この動画の"Tatsuhiro Mokuson RYSK"という人のコメントが、とても好きだ。
俺たちの希望の歌だと思って… - YouTube

僕は勝手に思うのは、これは、きっと「善」とかそういうものではなく「やさしさ」なんだと思うな。
声がやさしいもの。


本当にやさしい。やさしくするのではなく、勝手に溢れ出るようなやさしさ。


JUSTICEという連載動画で宮本は、やさしさって何ですかと聞かれて沈思黙考、ポロリと一言「難しい」と答えていた。
歌えば勝手にやさしいのに本人は気づいていない。
だからなおさら、その声はやさしい。

悲しみを増すのはなぜ?

俺たちが目覚めていく 静か過ぎる夜明けに
毎日が少しだけ 悲しみを増すのはなぜ


今年も京丹後へカニを食べに行き、24日の晩にプレゼントを仕込み、朝にまんまと騙されて嬉々としている息子を眺め、その晩は妻が丸焼きにしたチキンを頬張った。


そのすべての瞬間に、もうダメだというくらい、無性に悲しかった。
崩れ落ちそうな膝を必死に支えて、心底から楽しいという態の笑顔を浮かべてたら、頭がおかしくなりそうだった。


宮本は、「毎日が悲しみを増すのはなぜ?」と問うて、どういう解答に行き着いたんだろうか。


そんなこんなで、今日も一人で酒を飲んで、ふと一人でカラオケに入り、「あなたの優しさを〜」を歌ってみたら92点が出たので、今は気分がいい。

さあ、

仕事をしていた。
気づけば2016年初春の大阪ライブも行かず、仕事をしていた。
PAOの会費も払わずきっと会員でもなくなってるが、気づかず仕事をしていた。


44歳。
子供も大きくなった。
はーっと一息ついた時、昔何度もみたmusic fair「俺たちの明日」をyoutubeでふとみると、


「実は昨日お前とつるんで歩く夢を見たんだ」
宮本がそう歌っていたので、いま、路上で溢れる涙を抑えきれない。


僕は宮本と、エレカシと、つるんで歩いていた。
確かにそうだった。


会わない期間が長くても、会えばいつでもあの頃のつながりと同じようにつながっていると感じる。
ありがとう、宮本さん。


https://youtu.be/IqTz-_Aa_H8

現れろ

今日の昼、シングルの配信をダウンロードした。


そのまま聴き始める。始めのサビで、確かに襟首を掴まれて地上5mくらいまで引っ張りあげられる。
また、なんちゅう変わったメロディーだよ。
イントロの「どんな時も〜」不思議な和音の感じ、アウトロの「どんな時も〜」素晴らしい響き。
そのまま5回連続リピートしてるうちに、メロディーと歌詞の展開が渾然として、この歌の全体像が掴めたように思った。


そして今、酔った脳みそのままで繰り返し聴いて、 「圧倒的なオリジナリティ」を感じている。
コード進行は聴き慣れている。が、その上で流れるどの小節もどのフレーズも、これまで一度たりともよそで聞いたことのないメロディーじゃないか。
全てに、「唯一無二」というラベルを貼るようにして作曲したのに違いない。


それはまさに、3枚目や4枚目(25年前!)の頃のまんまじゃないか。


そのようなメロディーを生むことと、「現れろ 新たなる 闘いの神よ」という言葉が繋がる。
現れろ、現れろ、と念じながら五線譜に向かっている宮本の姿が立ち現れ、次の瞬間には歩き出す。それにアウトロの「どんな時も〜」が重なったとき、そこにはほら、ああ。


雨が降って風が吹くなか、歩き行く宮本の後ろ姿。


愛すべき今日

愛すべき今日

あくまで控え目な表現

幼稚園に入った息子が、これまで見向きもしなかった電子ピアノの前に座って僕に連弾をせがむ。息子の人差し指を持って、「やぎさんとかけっこだ」だの「ことりはとってもうたが好き」だのといった童謡の旋律を押してやると、目がキラキラしている。


誰しもこうして自分の音楽を始めるだろう。聴いたり弾いたり歌ったり、ずっと音楽に寄り添われて一生を過ごす。音楽という神様に見守られながら過ごす生涯。ヤハウェやキリストやマホメットや釈迦、みんな音楽の神の化身かもしれないんだから、できれば、仲良くしませんか。


この半年は本当にいろんな音楽を聴いた。あらゆるジャンルをつまみ食い。楽しかった。そしてさっき、さてさてという気分で久しぶりに、エレカシ特化のプレイリストを再生したのである。


その2曲目。
消えないココロの古傷に 沁みるぜ
立ち尽くす 賑やかなこの街で


突然この、あらゆる感慨を包みこむ声を聴いたとき、静かだった感情が湧き立ち行き場なく体内を駆け巡ったのち、両の眼から吹き出すのだった。


童謡から始まり僕の中に染み込んだこれまでの音楽の全てが共鳴する声。いつだって僕をこうしてしまうその声は、控え目に言って、神々しい。

2015年4月23日の私

たとえば怒濤の年度末が過ぎ、後悔の兵隊が来る。

最近聞いているプレイリストを掲載しようと思う。
プレイリスト名は、「月」

アーティスト 曲名 収録アルバム
マキシマム ザ ホルモン 平成ストロベリーバイブ 糞盤
マキシマム ザ ホルモン my girl 予襲復讐
マキシマム ザ ホルモン ブラック¥パワーGメンスパイ ぶっ生き返す
チャットモンチー 夢みたいだ ハテナ / 夢みたいだ - Single
チャットモンチー ふたり、人生、自由ヶ丘 変身
チャットモンチー 風吹けば恋 告白
チャットモンチー 世界が終わる夜に 生命力
チャットモンチー 生命力
スピッツ 小さな生き物 小さな生き物 - Single
エレファントカシマシ 涙を流す男 ズレてる方がいい
エレファントカシマシ はてさてこの俺は あなたへ
フラワーカンパニーズ 深夜高速 世田谷夜明け前
AI ハピネス ハピネス - Single
eastern youth 素晴らしい世界 感受性応答セヨ
eastern youth 月影 口笛、夜更けに響く
eastern youth たとえばぼくが死んだら 口笛、夜更けに響く
THEイナズマ戦隊 オマエ・がむしゃら・はい・ジャンプ 俺達の応援歌
河島英五 生きてりゃいいさ ゴールデン☆ベスト
河島英五 ほろ酔いで ゴールデン☆ベスト
斉藤和義 月影 ゴールデン・デリシャス
長渕 剛 愛してるのに 時代は僕らに雨を降らしてる
森山直太朗 太陽〜邂逅編〜 傑作選2001〜2005
毛皮のマリーズ ビューティフル ビューティフル / 愛する or die - EP
THE BLUE HEARTS 月の爆撃機 STICK OUT
THE BLUE HEARTS チェインギャング YOUNG AND PRETTY
エレファントカシマシ きみの面影だけ エレカシ 自選作品集 PONY CANYON 浪漫記
エレファントカシマシ ろくでなし 俺の道


驚くべき事に、世の中にはこんなにも沢山いい音楽がある。
問題はまだまだ数えきれないくらいある、ということで、軽く目眩を覚えるじゃないか。
ジュンク堂の書棚の列を眺めるときの目眩と同じ。

「有限の人生でそのうちのほんのわずかに接するのみ」という事実が、このプレイリストが例えば僕のいまここでの人生そのもの、自我そのものであることを雄弁に語っている。
この音楽を全部聞く人と僕は、肉体の深いところで接続するんだろう。